令和の大修復

教雲寺の今の本堂は、大正10年(1921)に建てられたものです。
2011年には「平成大修復」と題して、耐震工事や屋根瓦の葺き替えなどの大規模な工事を実施しました。
その際に手をつけることができなかった部分の修復を目的としたのが、「令和の大修復」です。

今回修復した主な箇所は、内陣の天井や柱の装飾と外陣天井付近の極彩色の部分です。
内陣(ないじん)とはお寺の正面、御本尊を中心として一段高くなっているところです。
外陣(げじん)とはお寺に入ってすぐ、参拝用に畳が敷き詰めてあるところです。

調査・検討

建築から100年を経て、遠目に見ても老朽化が進んでいることは明らかでした。
そこで専門家に調査を依頼し、老朽化の具合を把握しました。

詳細な調査の結果、装飾の痛みがはげしいことに加え、内陣天井にゆがみが生じていることがわかりました。特に痛みが激しいのが、外陣天井付近の極彩色の部分。そして内陣天井のゆがみの解消も大きな課題であることがわかったのです。

調査結果を受けて検討が進められました。どのくらいの規模の修復をするのか。予算は、工期は。
何度も会議を重ねながら、修復箇所を決め、予算に照らし合わせてどのくらいのレベルの出来上がりをめざすのか、事業の全体像を浮かび上がらせていきます。

修復スタート

2020年9月、本堂の修復工事がはじまりました。
まずは御本尊の阿弥陀如来さまに移動をしていただく「遷座(せんざ)法要」が勤められました。

法要の後、仏具を丁寧に移動して工事ができるように場が整備されました。ここからは、職人さんの丁寧なお仕事の連続です。いたんだ装飾をはがすのにも、丁寧に時間をかけてひとつひとつ取り組んでおられました。

修復中の様子

職人さんの仕事には、実にたくさんの工程があり、ひとつひとつが時間がかかることを目の当たりにしました。何世代も受け継がれた技が、随所にふんだんに施されているのがお寺の本堂です。ご参拝の折はぜひ、上に横にと視線を送っていただければと思います。

修復の途中、内陣の天井を補強し漆を塗っていく作業があり、その際に「文化十一年」の墨書きが内陣天井の奥の柱にあることがわかりました。文化11年は西暦1814年、時代でいえば江戸幕府の将軍が徳川家斉の頃といいます。教雲寺の本堂は大正10年(1921)に建てられたと伝わっていましたが、全ての木材を新調したのではなく前の本堂の木材を再利用して建てられたことが推測されます。100年前の木材を再利用した本堂が、100年伽藍を保っている。時代を越えるような不思議な感覚に襲われます。

完成した内陣

2021年4月、修復が終わり完成した内陣の様子の一部を以下よりご覧いただけます。

完成した外陣

こちらは外陣からご覧いただける部分です。

教雲寺にお立ち寄りの際は、ぜひ「令和の大修復」で美しく蘇ったお荘厳をご覧ください。